大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)486号 決定
抗告人 高橋康晴
相手方 高橋たみ子
主文
本件抗告を棄却する。
理由
一 本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消す。相手方の本件審判前の保全処分の申立を却下する。」というものであり、その理由は別紙〈省略〉記載のとおりである。
二 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
1 家庭裁判所がした審判に対しては家事審判規則に定められた場合に限り即時抗告のみをすることができるものであるところ(家事審判法一四条)、同規則によれば、禁治産宣告の申立に対する審判前の保全処分のうち財産の管理者を選任した審判に対しては即時抗告をすることは認められていないから(家事審判規則一五条の三、第一、二項、二三条一項)、本件即時抗告のうち財産管理者を選任した部分に対する即時抗告は不適法である。
2 次に、後見命令に関する部分についての当裁判所の判断は、原審判理由説示のとおりであるからこれを引用する。
抗告人は、相手方の禁治産宣告の申立及び本件審判前の保全処分の申立は、抗告人からその所有する財産の処分権を奪い右財産を相手方の自由にし、又相手方と抗告人の兄高橋康明との間の不貞行為を葬り去ることを目的としたものであり禁治産制度を濫用するものである旨主張するが、一件記録によるも右事実を認めるに足る資料はない。
又抗告人は、抗告人の申立にかかる離婚調停事件に関連して、抗告人所有の不動産につきその処分を禁止する旨の調停前の保全処分及び相手方申立にかかる民訴法上の保全処分として抗告人所有の不動産につき譲渡禁止の仮処分命令がなされているから、本件の保全処分はその必要性がない旨主張するが、本件の抗告人に対して後見を受けることを命じた審判前の保全処分と前記各保全処分とはその制度の趣旨及び目的を異にするものであるから、前記各保全処分がなされているからといつて本件の後見を命ずる保全処分の必要性がなくなるものとはいえない。
その他一件記録を精査しても原審判を取り消さなければならない事由は認められない。
3 以上により財産管理者を選任した部分に対する抗告は不適法であり、後見を命じた原審判は相当であつてこの部分に対する抗告は理由がないから、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 村上明雄 裁判官 寺崎次郎 安倍嘉人)